古代において、手に入りやす い甘味は果物でした。枇杷やスモモ、梨、桃、柿、棗、野葡萄などが食べられていたようです。甘味料には、蜜(蜂蜜)、蔗糖(砂糖)、糖(飴)、甘葛煎、甘酒などがありました。
【甘味料】
蜂蜜は奈良時代、聖武天皇に渤海国(現在の朝鮮半島北部、ロシアの沿海地方)から献上されています。
砂糖は、奈良時代に唐から来日した鑑真和上の伝記『唐大和上東征伝』に舶載された記録があり、これが日本に砂糖が伝わった最初と言われています。しかし奈良時代にはまだ一般に広がっていません。砂糖、蜂蜜とも現代のような嗜好品ではなく、一部の位の高い人物のみが薬として使用していたと考えられています。
飴は、穀物のデンプンを糖化させた水あめのようなもので、市場でも取引されていましたが、米の5~8倍の値段で、かなりの高級品でした。
甘葛煎は、ブドウ科のナツヅタの樹液を採取したものを煮詰めて作られた甘味料で、「甘葛」の文字は長屋王家木簡の削り屑からも見つかっています。奈良時代・平安時代には諸国から税として収められました。平安時代には、削った氷に甘葛煎がかけられていたことが清少納言の『枕草子』にみえ、かき氷のシロップだったようです。甘葛煎は砂糖の普及と共に失われましたが、現在、奈良女子大学で再現の取り組みが行われています。
【加工品】
加工された穀物菓子もありました。米や麦を粉にして練り、油で揚げたり焼いたりと調理したもので、唐から伝来したお菓子です。これらは「唐菓子」と呼ばれていました。塩や糖、蜜で味付けしたほか、甘酒を和えたり甘葛を塗ったりして食することもあったようです。
時代が下り、室町時代には皮の中に小豆が入った「まんじゅう」も奈良で誕生しました。身近な和菓子の始まりも奈良にあったのですね。