祈りの回廊

祈りの回廊 2022年春夏版

古墳をめぐる

Map data © OpenStreetMap contributors.
奈良の古墳

 奈良をめぐるとき、小高い丘やぽっこりとした山を見かけることがありませんか? もしかするとその一部は古墳かもしれません。
 古墳は3世紀中頃から7世紀にかけて造られた、故人を埋葬したお墓です。時代や被葬者の身分によって規模は違いますが、巨大なものは400mを越えるものもあります。日本全国で見つかっている約16万基の古墳のうち、奈良にある古墳は約9700基になります。
 奈良県内では、3世紀中頃、現在の桜井市・纒向遺跡(まきむくいせき)のあたりに全長が100m以上ある王墓クラスの前方後円墳が造られました。全国的にも古墳が造営された最初期にあたります。以降、4世紀後半ごろまで、その周辺に集中して前方後円墳が造られていることから、初期のヤマト王権があったと考えられています。また、7世紀になると薄葬になり、8世紀になると古墳の築造は終焉を迎えました。

 

 

高松塚壁画の発見から50年

 昭和47年(1972)、考古学にとって画期的な出来事が訪れました。明日香村の高松塚古墳で、石室内を彩る四神と星宿図(せいしゅくず) 、16人の古代の人物が描かれた極彩色の壁画が発見されたのです。華やかな壁画古墳が見つかったのはこの時が初めてでした。高松塚古墳でのこの発見は、考古学の分野だけでなく古代史や美術史、服飾史などにも影響を与えました。古代が多くの人々にとって身近なものになっていくきっかけにもなりました。今年2022 年は、そんな高松塚古墳壁画発見から50年の年に当たります。
 古墳は、現代の私たちにとっては古代の人々の営みを知る手がかりであり、貴重な文化財です。県内には古墳を知るための施設や、公園として整備され、訪れやすい古墳もあります。

古墳の変遷

  • 古墳時代終末期(7世紀中ごろ以降)

    大化2(646)年に薄葬令(葬儀の簡略化)が発布され、前方後円墳の造営がなくなります。築造は皇族や高位の者に許され、方墳や八角墳などになりました。明日香村の牽牛子塚古墳、高松塚古墳など。

  • 古墳時代後期(6世紀~7世紀前半ごろ)

    全体的に小型化し、石室は竪穴式から通路を備えた横穴式になって、家族などを追葬できるようになりました。中期の副葬品に加え、金銀の装飾品が目立ちます。斑鳩の藤ノ木古墳や、明日香の石舞台古墳など。

  • 古墳時代中期(5世紀ごろ)

    巨大な前方後円墳が数多く造られていた時代です。鉄製の武具や馬具など、軍事力を思わせる副葬品が増えます。ウワナベ古墳がある奈良市の佐紀盾列古墳群(さきたたなみこふんぐん)など。

  • 古墳時代前期(3~4世紀ごろ)

    円墳、方墳、前方後円墳が造られました。副葬品は青銅鏡や石の装飾品が特徴的です。纏向地域の箸墓古墳やメスリ山古墳など。

1.古墳を学ぶ施設

 橿原考古学研究所附属博物館は、同研究所の発掘調査成果を展示する博物館です。文字資料が少なく、「年」での時代の判断が難しい考古学では「基準資料」と呼ばれる遺物をもとに時代の変遷を判断しており、博物館ではその基準資料を多く所蔵しています。
 常設展での古墳関連の展示は、さまざまな古墳の写真・解説・模型・遺物などが充実しています。とくに前期古墳に関しては、他に類を見ないボリュームの出土品を展示。高さ2.4mを超える日本最大の円筒埴輪(メスリ山古墳出土)をはじめとする大型埴輪や、家形埴輪、愛らしい表情の動物の埴輪、また武具や装飾品などの副葬品もずらりと並びます。古代や歴史に詳しくなくても、展示を見るだけで、古墳時代の人々はどんな生活をしていたのかと想像が膨らみます。
 また1980年代、奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳から未盗掘の石室が発掘され、金銅製の冠や履(くつ)、馬具などの豪華な副葬品が埋葬当時の状態で見つかったことが話題になりました。それら国宝に指定された出土品の数々も常設展示しており、観覧できます。



奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

巨大な円筒埴輪や可愛い動物、人物の埴輪も展示。

奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

リニューアルで耐震対策され、
安全で見やすい。

奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

国宝の藤ノ木古墳の出土品も展示。

2021年11月 Renewal!
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館

  • 橿原市畝傍町50-2
  • 0744-24-1185
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ほかにも! 古墳について学べる施設
黒塚古墳展示館

黒塚古墳展示館

33面もの三角縁神獣鏡が出土したことで知られる黒塚古墳に隣接する。全国有数の長大さを持つ竪穴式石室や副葬品のレプリカを展示し、古墳の内部がよくわかる。

  • 天理市柳本町1118-2
  • 0743-67-3210
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キトラ古墳壁画体験館 四神の館

キトラ古墳壁画体験館 四神の館

キトラ古墳に隣接し、キトラ古墳の石室レプリカや壁画の高精細映像を視聴できる。別館の体験学習施設では、土日祝限定で勾玉づくりなどの体験もできる。

  • 高市郡明日香村阿部山67
  • 0744-54-5105
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2.石室に入れる古墳

石室は被葬者の棺を納めた場所です。古墳によって石の大きさや加工の精緻さの違いがあるのがわかります。ここでは整備され、石室内部を安全に見学することができる古墳を紹介します。

広さ、石室の内部を体感!

岩屋山古墳

岩屋山古墳

古墳時代終末期の方墳で、明治時代のイギリス人、ウィリアム・ゴーランドが「見事な仕上げと石を完璧な組み合せで、日本中のどれ一つとして及ばない」と絶賛した。

  • 高市郡明日香村越
  • 0744-54-5600(明日香村教育委員会)

文殊院西古墳

文殊院西古墳(国指定特別史跡)

安倍文殊院境内にある終末期の円墳または方墳で、切り揃えられ隙間なく詰まれた切石が加工技術の高さを感じさせる。この地の有力者だった安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)の墓の説がある。

  • 桜井市阿部645
  • 0744-43-0002(安倍文殊院)
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石舞台古墳(国指定特別史跡)

石舞台古墳(国指定特別史跡)

7世紀初め頃の方墳で、蘇我馬子の墓と見られている。盛り土が失われた石室は約30個の巨石から成り、天井は4.7mと高く、被葬者の権力の大きさが感じられる。

  • 高市郡明日香村島庄
  • 0744-54-9200( 明日香村地域振興公社)
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3.復元された古墳

現在、古墳は丘や小山に見えることもありますが、築造当時は盛土の流失を防ぐため「葺石(ふきいし)」と呼ばれる石で覆ったり、墳丘に埴輪を並べていました。当時の外観を復元した古墳を紹介します。

築造当時を実感

牽牛子塚古墳

牽牛子塚 けんごしづか 古墳

7世紀後半の八角墳の終末期古墳で、斉明天皇と娘の間人皇女(はしひとのひめみこ)の合葬墓と考えられている。凝灰岩の貼り石を復元し、築造時の形がわかりやすい。

  • 高市郡明日香村大字越
  • 0744-54-5600(明日香村教育委員会)

三吉石塚古墳

三吉石塚古墳

5世紀後半の帆立貝形古墳で、馬見古墳群中央群に含まれる。墳丘に盛土をして葺石を施し、円筒埴輪や朝顔形埴輪を置いて復元している。

  • 北葛城郡広陵町三吉
  • 0745-55-1001(広陵町教育委員会)

三陵墓古墳群史跡公園

三陵墓古墳群史跡公園

三基ある古墳のうち西古墳、東古墳の二基を復元整備し、公園化している。西古墳は5世紀前半で直径40mの円墳、東古墳は5世紀後半で長さ110mの大型前方後円墳。

  • 奈良市都祁南之庄町1581
  • 0742-34-5369(奈良市文化財課)
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古墳のある公園

国史跡指定の古墳あり大和3大古墳群の1つ

馬見丘陵公園

 

  • 馬見丘陵公園
  • 馬見丘陵公園
  • 馬見丘陵公園
  • 馬見丘陵公園

奈良県営 馬見丘陵公園 うまみきゅうりょうこうえん

4~5世紀ごろの古墳を中心に、250基を超える馬見古墳群の一画を公園に整備。中央エリアの公園館の展示で古墳について学習できる。また園内では季節の花を楽しむこともできる。

  • 北葛城郡河合町佐味田2202
  • 0745-56-3851(奈良県中和公園事務所)
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約 600 基の古墳が集まった日本を代表する群集墳

新沢千塚古墳群公園

(写真提供:橿原市教育委員会)

  • 新沢千塚古墳群公園
  • 新沢千塚古墳群公園
  • 新沢千塚古墳群公園
  • 新沢千塚古墳群公園

新沢千塚古墳群公園

4 世紀後半~ 6 世紀前半頃の古墳群。園内には約400 基の古墳があり、隣接する「歴史に憩う橿原市博物館」では出土品の実物や復元模造品を見学できる。

  • 橿原市川西町
  • 0744-47-3516(橿原市役所 緑地景観課)

奈良発! 古墳グッズ

古墳や副葬品をモチーフにしたグッズやお菓子もあります

古墳クッション

古墳クッション

椅子張職人が手掛ける、古墳をかたどったクッション。前方後円墳の他、様々な形の古墳も作っています。

  • 宇宙椅子
円成寺(えんじょうじ)

古墳型ケーキ おくつきの森

前方後円墳の形のケーキ。抹茶スポンジで緑を表現し、円筒埴輪を模したメレンゲで囲っています。

  • プティ・マルシェ & ぷちまるカフェ~
三角縁神獣鏡手鏡

三角縁神獣鏡 さんかくぶちしんじゅうきょう 手鏡

手のひらサイズの三角縁神獣鏡の手鏡。鏡面はもちろん鏡として利用できる実用的なもの。

  • 橿原考古学研究所附属博物館オリジナル
藤の木クリップ

藤の木クリップ

藤ノ木古墳から出土した、馬を飾る装飾品・棘葉形杏葉をかたどったクリップ栞。現物は国宝。

  • 橿原考古学研究所附属博物館オリジナル