「八十八面観音」と聞いて首をかしげる人もおられるかもしれません。
十一面×8で「八十八面観音」とお呼びしているのです。
仏教世界にはたくさんの仏さまがおられますが、いつの時代においても、どこの地域においても、
観音様はもっとも信仰されてきた仏さまのおひとりです。
西山 厚(にしやま あつし)
1953年徳島県鳴門市生まれ。京都大学文学研究科博士課程修了。奈良国立博物館学芸部長を経て、現在は帝塚山大学文学部文化創造学科教授。奈良と仏教をメインテーマとして、生きた言葉で語る活動を続けている。『大和路秀麗 八十八面観音巡礼』の監修を担当した。
国宝
室生寺十一面観世音菩薩立像
女性的な優しさが漂う像。金堂にずらりと並ぶ仏様の、向かって左端に静かに立っている。ふっくらした頬、ちょっと突き出したおちょぼ口。光背の彩色が美しいのも印象に残る。
- 宇陀市室生78
- 0745-93-2003
- 近鉄室生口大野駅→室生寺行バス終点下
車徒歩約5分
国宝
聖林寺十一面観音立像
大神神社の神宮寺(大御輪寺)に祀られていたが、明治の神仏分離によって現在の地に移る。女性的な優美さと男性的な威厳があり、フェノロサや和辻哲郎からも絶賛された。
- 桜井市下692
- 0744-43-0005
- JR・近鉄桜井駅→談山神社行バス「聖林寺」
下車徒歩約3分
JR・近鉄桜井駅→タクシー約10分
国宝
法華寺木造十一面観音立像
光明皇后の姿を写したと伝えられる。右足が蓮台からはみ出し、歩み始めたように見える。さまざまな不思議な出来事が語り継がれる霊像。蓮の花と葉が交互になった光背が珍しい。
- 奈良市法華寺町882
- 0742-33-2261
- JR・近鉄奈良駅→西大寺駅行バス
航空自衛隊行バス「法華寺」下車徒歩約3分
近鉄大和西大寺駅→JR・近鉄奈良駅行バス「法華寺」下車徒歩約3分
近鉄新大宮駅下車徒歩約15分
重文
西大寺十一面観音像
もとは鳥羽上皇が京都に建てた十一面堂の本尊だったが、鎌倉時代に後深草上皇によって西大寺に移された。高さ約6mの巨像で、おっとりしたおだやかな表情をしている。
- 奈良市西大寺芝町1-1-5
- 0742-45-4700
- 近鉄大和西大寺駅下車徒歩約3分
重文
海龍王寺十一面観音菩薩立像
光明皇后が刻んだ観音像をもとにして鎌倉時代に造られたと伝えられる。秘仏であったために保存状態がよく、金色の肌に、華麗な装身具と、衣に施された截金文様が美しい。
- 奈良市法華寺町897
- 0742-33-5765
- JR・近鉄奈良駅→西大寺駅行バス・航空自衛隊行バス「法華寺」下車徒歩すぐ
近鉄大和西大寺駅→JR・近鉄奈良行バス「法華寺」下車徒歩すぐ
近鉄新大宮駅、徒歩約15分
重文
大安寺十一面観音立像
お顔と両腕の先はのちの時代のものに変わっているが、精巧に刻み出された胸飾りや衣のラインが美しい。奈良時代以来の長い時間を感じさせる、少し風化した木肌が心にしみる。
- 奈良市大安寺2-18-1
- 0742-61-6312
- JR・近鉄奈良駅→シャープ前バス・白土町行バス「大安寺」下車徒歩約10分
JR奈良駅下車徒歩約25分
重文
法輪寺十一面観音菩薩立像
およそ4mの大きな像で、大きな眼、しっかりした鼻、厚い唇、長くたくましい手が印象的。向かい合うと、安心感が生まれ、明るく朗らかな気持ちになる。
- 生駒郡斑鳩町大字三井1570
- 0745-75-2686
- JR・近鉄王寺駅→国道横田行バス「中宮寺前」下車徒歩約15分
近鉄筒井駅→王寺駅行バス「中宮寺前」下車徒歩約15分
重文
長谷寺十一面観世音菩薩立像
とても大きな観音様で、10mを超える。右手に錫杖を持つ姿は独特で、衆生を救うために歩き回っていることを示している。長谷寺は観音の霊場として平安時代からよく知られていた。
- 桜井市初瀬731-1
- 0744-47-7001
- 近鉄長谷寺駅下車徒歩約15分
深い苦しみや悲しみに耐えきれず、思わずお名前をお呼びしたとき、
観音様はその声をすぐに聞き取って、必ずやって来てくれます。観音様を訪ねる旅。
お寺の魅力、その地域の魅力、そして仏像の魅力が相俟って、心も体もやすらぐ巡礼になることでしょう。
(文/西山 厚 撮影/飛鳥園)
霊場会特性・和綴じ式朱印帳と御朱印について
大和路秀麗八十八面観音霊場会の御朱印は仏様の光背を意匠的に模った、専用の用紙となっております。
- 最初に参拝された寺院でまず、専用の和綴じ式朱印帳を戴いてください。(志納料500円)
- 巡拝された各寺院で特製の朱印帳を戴かれ、朱印帳の各寺院頁にお貼り下さい。