祈りの回廊

特別講話

「神様が二千年おわす場に触れて心のリセットを」 石上神宮
宮司/道上 昌幸 氏

─石上神宮のご由緒などについて教えてください。
─石上神宮のご由緒などについて教えてください。
今から二千百年余り前、第十代崇神(すじん)天皇七年に石上布留(ふる)の高庭に神様をお祀りしたのが始まりです。御祭神は「布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)」と「布留御魂大神(ふるのみたまのおおかみ)」と「布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ)」。「布都御魂大神」は起死回生のお力のある剣「神剣韴霊(ふつのみたま)」という神武東征伝説に登場する剣に宿られる神様です。「布留御魂大神」は人の命を守る、活性化させるという力を秘めた神宝「天璽十種瑞宝(あまつしるしとくさのみづのたから)」に宿る神様です。「布都斯魂大神」は『古事記』などに記される八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した剣「天十握剣(あめのとつかのつるぎ)」に宿る神様です。
─奈良においても非常に長く、独自の歴史を持つお社かと存じます。
こちらで20年奉職して宮司となりましたが、今まで私たちの先輩であるとか先人、地域の方々がこの神社を支え、守り伝えてくださっての現在だと思っております。境内の環境などの雰囲気をそのままずっと後世に伝え、例えば10年後に再びお詣りくださった方が「変わらないね、懐かしいね」と感じてくださるお宮でありたいなと。それから実は石上神宮は地域密着な社でして、近隣の村々一つ一つにそれぞれ神社があり、合わせて40社以上になるのですが、年間で大きな3つのお祭り(※1)には、当宮から各社に伺います。そのほかの機会でも地域の皆様との交流が続いていて本当に親しくさせていただいています。奈良のそうした素朴さも大切にし続けたいですね。
(※1)祈年祭・例祭・新嘗祭
─とても身近な存在に思えてまいりました。
神社の参道は木のトンネルの様になっていて、そこにはやわらかい木漏れ日が差していたり爽やかな風が吹いていたりしますよね。わたしは神道はそうやって五感で感じる宗教だと思っています。「お祓(はら)い」を非常に大切にしますが、それを今の言葉で表すとすれば「心のリセット」になるでしょうか。生きているうちに重ね着のように積もった思いを脱ぎ捨てて、また新たな神様の力に触れさせていただく。石上神宮は二千年以上神様がお住まいになる深い森の中にあります。人間の小手先でどうにかできるものではない空気を感じながらお詣りしていただきたいです。我々も地域の皆様とともに、守り伝えられてきた環境を損なうことなく次世代に手渡せるように努めて参りたいと思っております。

プロフィール

石上神宮/
宮司 道上 昌幸(みちかみまさゆき)氏


2023年から石上神宮宮司を務める。神剣「フツノミタマ」顕現(けんげん)150年記念での「御本殿と禁足地」特別参拝や、国宝「七支刀」の検査を行うなど同宮の環境や宝物を次世代へ伝える取り組みを行う。

特別講話Special Interview