祈りの回廊

特別講話

「自分を見つめ、助け合い、尊重と融和の日常へ」 櫻本坊
住職/巽 良仁 師 神職/巽 安寿 氏

―天武天皇と関わりが深いご由緒について、お話いただけますでしょうか。
―天武天皇と関わりが深いご由緒について、お話いただけますでしょうか。
巽良仁
天武天皇が大海人皇子の時代、冬に雪を割って満開となった桜の夢をご覧になりました。それは吉兆とされ、皇子はのちに壬申の乱に勝利。即位後、夢の桜を探して吉野山に入られます。そして「夢見の桜」に出合い、その桜の木の下に建立したのが櫻本坊となります。「桜の木のもとのお寺」という名前です。

巽安寿
かつて当山では天武天皇のご神像をお祀りしていました。明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で行方がわからなくなってしまったのですが、岡倉天心のデッサンが残されていたことで、ご神像を復興することができました。毎年11月には神事やご神像の特別開帳を行っております。吉野は神仏習合の地です。分け隔てることなく、多様性や融和を尊重し、受け入れる太平の地。今、改めて振り返るべき姿に思えます。
―コロナ禍でインターネットを利用した新たな取り組みもされているとか?
巽安寿
SNSサービスを利用してライブ配信を始めました(※1)。守るべき伝統や本質と、柔軟さや多様さとの舵取りは悩ましいですが、さまざまな環境の方と一緒に祈りを捧げることができたらと思っています。

巽良仁
ライブ配信をきっかけに、実際にお参りに来てくださる方も増えましたね。

巽安寿
はい、皆さんが笑顔で参拝においでくださり、笑顔で帰って行かれる姿に触れることができると本当に嬉しいです。

巽良仁
この度のコロナ禍を経験して、山や川など自然の中に身を置いて、改めて自らを見つめ直し、日常をどう生きていくか考える機会とされた方も少なくないでしょう。自分の足で山を歩く超アナログな祈り、それが修験です。山で声を掛け合い、荷物を持ち合い、自然に人々が助け合う。そうしたことを通して得られるものがあります。皆、温かい血が通う人間。性別・年齢・職業などにとらわれることなく、「いい思い」「いい言葉」を交わし、互いに尊び敬う気持ちをもって日常を積み重ね、ともに幸せになって参りましょう。役行者を開祖とする修験道の道場として開かれた櫻本坊として、お伝えして参りたいと思います。
 
(※1)櫻本坊インスタグラム
@sakuramotobou.official
お護摩のインスタライブ『ひらけごま』配信中。金峯山修験本宗別格本山の寺院で吉野山にある大峯山護持院の一つとして崇敬を集める寺院のモダンな取り組みは世界各国で視聴されている

プロフィール

櫻本坊/住職 巽 良仁(たつみりょうにん)師

1960年生まれ。上智大学哲学科卒業。
1981年に櫻本坊(さくらもとぼう)第67世住職拝命。現在に至る。

櫻本坊/神職 巽 安寿(たつみあんじゅ)氏

1989年奈良県生まれ。London College of Communication大学卒業。医療通訳士、翻訳者として働く傍ら、神職として奉職。

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