祈りの回廊

特別講話

「日々、全世界が仲良くあれと願って」 中宮寺
門跡/日野西 光尊 師

日々、全世界が仲良くあれと願って
日々、全世界が仲良くあれと願って
 中宮寺は、聖徳太子さまが母である用明天皇皇后・穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)のため、その宮殿をお寺に改められたとされ、ご本尊の国宝・菩薩半跏像(伝如意輪観音)は、聖徳太子さまがお母さまをお偲びになって彫られたと伝わる仏様です。
 約60年前、幼稚園教諭として働いていたところに「皇族や公家の女性が門跡を務めてきた中宮寺が門跡遷下の後、不在になっている」のでぜひという話を頂戴しました。教育の大切さや女性の手助けができることに使命感を抱いて仕事に取り組んでいましたが、飛鳥時代から信仰を集めてきた場所で、尼僧となって女性の相談に乗り、仏様にお仕えするという一生は、大変な生き甲斐があることだと思い、この道を選びました。全く迷いませんでした。
 長いお務めの間には、いろんなことがありましたね。最近では2020(令和2)年11月に東日本大震災から10年を迎える被災地の復興を祈念して「奈良・中宮寺の国宝展」を、宮城県美術館で開催いたしました。ご本尊様も仙台へお出ましいただいたのですよ。
 夏には「中宮寺女児心身修練会(女児一休さん)」と「中宮寺女性心身修練会(尼僧体験)」を行って参りました。長年の念願であった女性の道場を開くことができ、今年は27回目と22回目になるところでしたが、コロナ禍の為、昨年に続いて中止としました。
 お寺においでいただければ、悩みを聴いたり、ともに祈ったりできます。でも今は難しい状況です。コロナ禍もしかり、世界では争いごとが絶えませんね。世界の皆様が平和に穏やかにすごせますようにと、毎日ご本尊さまに願っています。穴穂部間人皇女もまた平和を求められたすばらしい方だと伝えられています。おそばでお仕えすることは私の幸せです。
 本年2021(令和3)年は、聖徳太子1400年御遠忌という節目の年。「天寿国曼荼羅繍帳(てんじゅこくまんだらしゅうちょう)」(※1)は日本最古の刺繍遺品で、聖徳太子を偲んで、天寿国のありさまが描かれています。ぜひご覧ください。また柔らかなほほえみのご本尊様と向き合って自分を見つめ直す時間をもっていただくのも良いでしょう。毎週土曜日には相談室を設けています。皆様に安心してお参りいただける日が来ることを心から願っています。

(※1) 「天寿国曼荼羅繍帳」実物は奈良国立博物館に寄託。中宮寺本堂には複製が安置されています。

プロフィール

中宮寺/門跡 日野西 光尊(ひのにしこうそん)師

中宮寺門跡。
1930年生まれ。旧華族。
1951年に幼稚園教諭に就き、1961年に30歳で中宮寺に入り、得度。
1964年から現職を務める。

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