特別講話
「町とともにあり続ける御坊(ごぼう)として、人々が集う居場所に」
稱念寺
住職/今井 慶子 師
特別講話ダイジェストムービー(稱念寺)

- ─稱念寺の創建について教えてください。
- 室町時代、「今井郷」や「今井の里」と呼ばれた興福寺一乗院の荘園に今井兵部卿(いまいひょうぶきょう)が道場を建てたことに始まります。道場改め稱念寺となったのは慶長5年(1600)頃です。ご本尊は阿弥陀如来さまで、そのお隣にご本山にいただいた親鸞上人の絵像。この絵像は遠目だと立体に見える、御坊(※1)にしかない貴重なものです。紀州藩とのゆかりも深く、紀州藩主のお位牌も安置しています。
(※1)ここでは大和五ヶ所御坊のこと。奈良県にある浄土真宗本願寺派の5つの寺のことを指します。
- ─ 稱念寺の寺内町である今井町は裕福な町だったそうですね。
- 道場主は代々お侍さんでもありました。町をつくり守ってくれるのがお寺さんでありお侍さんでもあることが頼もしかったのでしょう。近隣のお金持ちが今井町に引っ越してきて、どんどん発展したようです。そこに目を付けた一人が織田信長で、金持ちの町は攻め落とすより残すほうがいいと思われたのか「今井町には攻めいらないので税金を納めるように」となりました。豊臣秀吉とも縁が深く、秀吉は吉野山の花見に行くとき、この町に宿泊。その場所は「茶屋屋敷」として現在も残されていますし、また信長や秀吉の朱印状が稱念寺に伝わっています。後に道場から稱念寺となり、またしばらくして武士の身分を返上しています。
- ─ ご本堂の解体修理が令和4年(2022)に完了しましたが。
- 基本的に毎月第3木曜に公開日を設け、見学していただけるようにしています。修理前は本堂西側の屋根が全部落ちてブルーシートをかけている状況でしたが、もっと古いお寺がある中で、平成14年(2002)に本堂が国の重要文化財に指定されたのは、実行への大きな力になりました。環濠集落であること、戦国時代の町並みが残っていたこと、それが稱念寺の境内地であること。この全部が揃っている町は日本でただ一つ今井町だけであり、その中核である稱念寺というお寺の価値を認めていただけたのです。昭和時代に大きな道を通すなどの都市開発が検討されても、そのままの町並みを守ると決めてくれた先人たちがいてくれたおかげですね。稱念寺は、ずっと町とともにあるお寺です。これからも町の中で役割を果たしていきたい。誰もが気軽に訪ねてきてくださるお寺、小さな子どもたちものびのび過ごしてくれるような場所であれたらと思います。

プロフィール
稱念寺/住職 今井 慶子(いまいけいこ)師
橿原市出身。稱念寺住職の長女として生まれる。父と兄を亡くし、稱念寺住職代理を経て2016年から現職。能登半島震災の際はチャリティーを行い義援金を集めるなど奉仕活動を続ける。
特別講話Special Interview
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