特別講話
「人が集い自然に感謝することが神社の始まり」
丹生川上神社上社
宮司/望月 康麿 氏
ダイジェストムービー
- ─神社のご由緒などを教えてください。
- 丹生川上神社は、ここ川上村の上社と、東吉野村にある中社、下市町にある下社という三社があり「白鳳4年(675)に『人の声聞こえざる深山吉野の丹生川上に我が宮柱を立てて敬(いつ)き祀らば天下のために甘雨(かんう)を降らし霖雨(りんう)を止めむ』という御神託により吉野の地に丹生川上神社が鎮座した」という同じ歴史をぞれぞれに伝えています。雨が降ってほしいときは黒い馬を、晴れてほしいときは白い馬を奉納して祈願するというのは、全国でも京都の貴船神社と丹生川上神社のみ。歴代の天皇が数十回にわたり実際に生きた馬を奉納して祈雨、止雨の祈願をされた社です。当社のご祭神は龍神である高龗大神(たかおかみのおおかみ)、中社は罔象女神(みづはのめのかみ)、下社は闇龗神(くらおかみのかみ)といずれも水の神様をお祀りする三社が協力し「丹生川上神社三社めぐり」という取り組みを始めて13年ほど。吉野の手すき和紙で作った特製の御朱印紙をご用意して、おかげさまで多くの方がお越しくださっております。
- ─来年は創祀(そうし)1350年を迎えられるのですね。
- はい。当社はダム建設によって旧境内地がダムの水底となり、現在の山の上に遷座(せんざ)しています。これは村を二分する出来事で、その後に私が宮司として就任した当時、村の方のお参りはほとんどありませんでした。そこで、とにかくお祭りがありますとお声がけをし、直会(なおらい)で酒食を共にしながらお話を伺うようにしました。今ではダムの水の中においでの龍神様と山に上がった龍神様がおいでになるのだと考えられるようになった、そういう土地柄です。現在の境内からダム湖がきれいに見えますので遥拝所(ようはいじょ)を設けました。まずはここからお参りされる方も少なくないのですよ。地元の皆さんがおいでくださるようになると、自然と村外からのご参拝者も増えました。昔から神社というのは人が集まるところです。集まってお祭りごとをして、情報交換を行う。そうして地域が充実し、ますます人が集まる。そもそも、その感謝の気持ちが神社の始まりなのではないでしょうか。創祀1350年に向けても、ほんのささやかなことであれ一人でも多くの方とご縁があればうれしくありがたいことです。そのためにも、皆さんが清々しい気持ちでお参りをして、この神社に来てよかったなと思ってお帰りいただけるよう、いつでもきれいな神社でありたいですね。
プロフィール
丹生川上神社上社/宮司 望月 康麿(もちづきやすまろ)氏
1953年静岡市生まれ。皇學館大学文学部国史学科卒。2012年から丹生川上神社上社宮司。
特別講話Special Interview
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