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特別講話

「思い煩(わずら)いをお預けし、ともに祈り、今できることを」 金峯山寺
金峯山修験本宗 管長・総本山金峯山寺 管領/五條 良知 師

ダイジェストムービー

─ 金峯山寺のご本尊である蔵王権現とは?
─ 金峯山寺のご本尊である蔵王権現とは?
今から1300年前、役行者(えんのぎょうじゃ)(※1)が大峯山の山上ヶ岳で千日間の修行をなさいました。「悪い時代を生きる人々を救ってくださる仏様を」と祈ったところ、釈迦如来、観音菩薩、弥勒菩薩が現れます。しかし「悪い世の中を生きる人々を救うにはあまりに優しい。もっと厳しい方にお願いをしたい」と、さらに修行を続けると、バン!と石を割って憤怒の表情をした仏様が。私どもが「役行者が祈り出した」と申しておりますこの御仏が金剛蔵王大権現(こんごうざおうだいごんげん)です。役行者は「この方こそが人々の目を覚まし、叱りつけてでも助けてくれる」と、山桜の木に彫刻しお祀りされました。権現というのは「仮に現れた」ということ。釈迦、観音、弥勒それぞれが優しくはないお姿を仮に表したのが蔵王権現様(※2)だと今日に伝わっております。


(※1)修験道の開祖とされる
(※2)過去を救済する釈迦、現在を救済する観音、未来を救済する弥勒が一体となって現れたのが蔵王権現
─ 2024年は世界遺産登録20周年と伺いました
文化的景観という言葉が初めて使われて重要性が認められ、「紀伊山地の霊場と参詣道」として吉野山が世界遺産となりました。世界遺産をきっかけにご参拝くださる方が増え、蔵王権現様を好きになって、周りの方に「一度お参りしておいで」と伝えてくださるのはありがたいことです。また、構成資産の一つの仁王門の解体修理は令和10年(2028)に完成予定です。
 
─ 日課の「とも祈り」について教えてください
新型コロナウイルス以降、奈良の東大寺様をはじめ多くの方々とともに毎日正午に「とも祈り」をしてきました。場所は違えども、時を同じくして、気持ちを同じくして祈るものです。どなたでもいつからでもご一緒しましょう。南無阿弥陀仏でもアーメンでもかまいません。ごちそうさま、ありがとう、おやすみ、おはよう。こうした挨拶で、随分と日々の生き方が変わってくるもの。分断ではなく、一緒に続けること。蔵王権現様は「過去現在未来を救うてやる」と言っておられます。思い煩っていることをお預けしていいんですよ。それで心身がちょっと軽くなったら、自分が今できることを頑張ってみる。今頑張れたら過去のことが報われます。今頑張れたら未来の道が開け、次世代の子供たちの世界が少し良くなるのです。人が人のために祈る。そういうことが大事だとお伝えしているところです。

プロフィール

金峯山寺/
金峯山修験本宗 管長
総本山金峯山寺 管領
五條 良知(ごじょうりょうち) 師


昭和39年京都府綾部市生まれ。平成4年金峯山寺に奉職。同27年より現職。

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