特別講話
「導きの神様を祀り、遍(あまね)く人々の幸せを願う」
飛鳥坐神社
宮司/飛鳥 弘文 氏
ダイジェストムービー
- ─ 神社のご由緒などを教えてください
- 創建年代は定かではありませんが『日本書紀』の神代巻に、大国主神が国を譲ることを承諾した後、当神社の御祭神である事代主神(ことしろぬしのかみ)は手を逆手(さかて)にして(両手の平を正面に向け降参を意味する)海に入って行かれたという記述があります。ここに伝わるように、事代主神が政治的に動かれたことで、争いを起こさず穏やかに国譲りができたのではないでしょうか。神様方を率いて天上界に登っていくだけの力がある偉大な神様です。
また天武天皇元年(673)七月の条には「吾は高市社に居る名は事代主神」と記されております。平安時代初期、天長6年(829)三月十日神託により高市郡賀美郷の神奈備山より現在の鳥形山に、この八重事代主命(やえことしろぬしのみこと)(※1)は、飛鳥神奈備三日女神(あすかのかんなびみひめのかみ)、高照光姫命(たかてるひめのみこと)、建御名方命(たけみなかたのみこと)と共に遷座(せんざ)され、お祀りされたことが『日本紀略』に記されております。
(※1) ご神徳が天地、宇宙、目に見えない世界にまで拡がり八重にも積み重なるといわれる神様
- ─ 飛鳥坐神社さまと言えば、天下の奇祭とも呼ばれるおんだ祭が行われることで大変に有名ですね
- 毎年2月第1日曜日に斎行しております。大変寒い時期の行事ですが、地元の方だけではなく遠方からも多くの方々が足を運んで下さる賑やかなお田植え祭です。現在日本の農業就業人口は数%にすぎません。その方々が一生懸命育てて下さったお米をはじめとする農作物をいただいて、我々は元気をいただき、それぞれの仕事に励むことができる。「食べることに困らない豊かな時代が続いてほしい」と豊穣を願い、「この幸せを子や孫にも」と子孫繁栄を願う。そういう誰しもの幸せを願うお祭りであり、「寒い冬を乗り越え暖かい春がやってきますように。花が咲いて実りますように」という気持ちで神様に祝詞を奏上しています。
- ─ 食が満たされることは普遍的な皆の幸せですね
- そうですね、皆が幸せであるためにやはり食は欠かせませんし、食によって和む、いわゆる幸せに繋がると思います。「一人で生きている」と考える人が多い世の中ですが、その方を守っている縁のある方たちが必ずいます。その方の命は御先祖様からずっと続いている。この世にせっかく生まれてきたあなたを幸せにしたいと願う方々は、たくさんいらっしゃるんですよ。「幸せになりたい」という願いは誰もが持っていただきたいと思います。皆が幸せである世の中が、神様の願いでもあるのですから。
プロフィール
飛鳥坐神社/宮司 飛鳥 弘文(あすかひろふみ)氏昭和22年奈良県明日香村生まれ。飛鳥坐神社87代目宮司。昭和50年から現職。
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