祈りの回廊

特別講話

「仏・法・僧を守り、かまどの 神を祭り、大自然とともに」 荒神社(立里荒神)
禰宜/林 正裕 氏

ダイジェストムービー

─ 荒神社のご由緒をお聞かせください
─ 荒神社のご由緒をお聞かせください
816(弘仁7)年、弘法大師空海さまが高野山に伽藍を建立する際に初めてご登山されたと伝わっています。高野山を開基するにあたって一枚の板に三宝荒神(※1)の像を描いて本尊として、17日間にわたって荒神を祀り、檀上の鬼門に荒神の社を勧請(かんじょう)されました。当社の起源について記した『荒神ヶ岳鎮座三宝大荒神略縁起』が残されております。
─ 「荒の神社」ではなく「荒神の社」ということなのですね
はい、正式名称が荒神社で、通称が立里荒神です。お大師さまが荒神社へ月詣りされたと言い伝えられ、今も月詣りされる方が絶えません。信心して祀れば良いことを、そうでなければ災いを起こすとされていて、ご参拝くださる方々には「怖い神様」とよく言われています(笑)。
当社の御祭神、火産霊神(ほむすびのかみ)は火の神、かまどの神です。以前は、高野山の女人堂からここまで、お米一合を携えてずっと歩いてきて参拝し、そのお米を炊いて食べて過ごすという習慣がありました。一泊して朝再び参拝して、元来た道を戻ります。朝出発して、到着は夕刻。険しい山道の往復です。現在は、商売繁盛を祈願される方が多く、高野山から足を延ばしてお参りいただいています。
かまどと言えば、当社の参籠(さんろう)所では、おうどんなどを召し上がってもらえるようにしています。ほぼ年中やっていますので一息ついていただけたらと思います。
─ 周辺の眺めも雄大ですばらしいですね
機会がありましたら、雲海をご覧いただきたいです。雲海が出るにはいくつか条件がありますが、その一つは寒暖差。真夏や真冬ではなく、春と秋の季節の変わり目の、前日雨が降り、グッと冷え込んだ早朝が好機です。
それから奈良県ではちょっと珍しいのですが、白樺林があります。当社のある野迫川村の気候は信州と近く、白樺が自生していました。祖父の時代から「木は大切に守り育てなければならない」として植樹も行っています。この教えは本殿の建て替えの際も生かされ、境内で育った杉を伐採せずに屋根を貫通させ、そのまま育つようにしました。お参りの際にぜひご覧ください。

(※1) 仏・法・僧の三宝を守護するという神

プロフィール

荒神社(立里荒神)/禰宜 林 正裕(はやしまさひろ)氏

昭和60年生まれ。高野山で育ち、平成23年から荒神社に奉仕。

特別講話Special Interview