特別講話
「神仏習合の社 大改修に向けて」
玉置神社
宮司/舛谷 武 氏
- 神仏習合の社 大改修に向けて
- 玉置(たまき)神社は『紀元前37年第十代崇神(すじん)天皇の時代に、王城火防鎮護(おうじょうかぼうちんご)と悪神退散のため創建された』と伝えられています。古くより熊野から吉野に至る、熊野・大峯修験の行場の一つであり、境内にある玉石社(たまいししゃ)(※1)には、役小角(えんのおづぬ)や空海が如意宝珠(にょいほうじゅ)(霊験ある宝玉)を埋めたとの伝承が残され、こうして「玉」を鎮(しず)め「置」いたことが名前の由来だともされております。
平安時代には神仏習合となり、玉置神社は玉置三所権現、または熊野三山の奥の院と称せられ、霊場として栄えました。花山院(かさんいん)、白河院らが御幸(ごこう)(※2)され、また和泉式部も参籠したと伝わっています。その後、明治時代の神仏分離を経て、現在に至っております。平成16(2004)年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されました。
玉置神社では、令和2(2020)年に「令和の大改修」に着手致しました。信頼できる宮大工の方とのご縁があり、社殿等の診断をしてもらったところ、改修は差し迫った課題だと判明しました。そこで関係者の皆様との協議を経て大改修をする決断をいたしました。
近年、玉置神社へのご参拝者が増えたことは、改修決断への大きな後押しでした。「令和の大改修」を立ち上げて以降、北は北海道、南は沖縄、日本中から奉賛を頂戴しています。私は十津川村で生まれ育ちましたが、このような山奥にある社に全国各地から思いを寄せていただけることに驚き、また感謝の気持ちでいっぱいです。
最初に7~8年かけて改修に取りかかる予定の社務所は、国指定の有形重要文化財で、書院建築と参籠所の合わさった古い様式を色濃く伝える貴重な建築物です。その後、本殿、出雲社、三柱神社、神輿殿(みこしでん)、神楽殿の 順に改修を進めていく予定で、大改修の規模の大きさを実感しております。
建物はもちろん、玉置神社ゆかりの文化財や、樹齢三千年と伝わる神代(じんだい)杉を始めとした天然記念物に指定されている巨樹など周辺の環境も守り伝えたいですね。佐々木高綱(ささきたかつな)寄進とされる梵鐘(ぼんしょう)や、狩野派の絵師・橘保春(たちばなやすはる)らの筆により描かれた花鳥画の襖絵など神仏習合の名残を留めるこれらの財産を、これからも皆さまとともに、大切に管理、保存していきたいと思います。
(※1) 玉石社
玉置神社本殿と玉置山の頂上までの中程に鎮座。玉置神社の基となったと伝えられる。
(※2) 御幸
上皇や法皇などの外出を敬う表現。
プロフィール
玉置神社/宮司 舛谷 武(ますたにたけし)氏2020年玉置神社宮司に就任。
吉野郡十津川村出身。
2018年玉置神社宮司代務者となって以降、氏子とともに境内の整備等に取り組む。
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