特別講話
「時を越え伝える 聖徳太子の和の心」
法隆寺
管長/古谷 正覚 師
- 時を越え伝える 聖徳太子の和の心
- 法隆寺は、聖徳太子が父・用明天皇の病気平癒とその亡き後の追善のために造立を発願したお寺です。金堂に納められた薬師如来像の光背(こうはい)に刻まれた銘文から、推古15(607)年創建とされています。同じく金堂に安置されている釈迦三尊像の光背(こうはい)には、聖徳太子とその妃の、病気平癒と冥福を祈ったことを記された銘文があり、聖徳太子の菩提を弔う寺へと変わっていった様子が見て取れます。この仏様は聖徳太子の等身大の像だとされています。
今年は、聖徳太子が薨去(こうきょ)されてから1400年目の御遠忌(ごおんき)の年(※1)にあたります。折しも、新型コロナウイルス感染症流行でさまざまな問題が生じている現在ですが、聖徳太子が生きた時代もまた病気や戦いによる乱世。十七条憲法で役人の心得を示し、その中で「和(わ)を以(もっ)て貴(とうと)しとなす」と記したのは、「なんとか平和な世界にしたい。皆で仲良くしていきましょう」という、聖徳太子のお気持ちからだったのではないでしょうか。我々の生活に置き換えれば、マスクを着用する、手洗いをする、三密を回避するといった一人ひとりの行動が肝心ですが、これも和の心。ワクチン等ができるまで感染症の流行とどう付き合うのか。皆で注意を払い、助け合うことが大切です。
1400年御遠忌という節目を、期せずして管長として迎えることになりましたが、聖徳太子の教えを広めるという、寺としての変わらぬ責任を粛々と果たして参りたいと思っています。
具体的にはまずは聖徳太子の遺徳をたたえ供養する聖霊会(しょうりょうえ)という法要です。本年は十年に一度、大講堂前で大規模に行う大会式(だいえしき)がある年で、夢殿(ゆめどの)から大講堂まで行列を組む予定です。夢殿は天平20(748)年に聖霊会が始められたとされる太子信仰はじまりの場所です。寺外では、聖徳太子1400年遠忌記念特別展「聖徳太子と法隆寺」(※2)を、奈良国立博物館、東京国立博物館の二か所で開催します。
飛鳥時代の人が見た景色そのままが残る境内や、法隆寺で守り伝えてきた寺宝を間近にご覧いただける場所で聖徳太子の心に思いを馳(は)せていただけましたら、大変にありがたいことです。
(※1)聖徳太子1400年御聖諱法要
4月3日(土)~4月5日(月)予定
(※2) 奈良展/2021年4月27日(火)~6月20日(日)に奈良国立博物館東・西新館で開催
東京展/2021年7月13日(火)~9月5日(日)に東京国立博物館平成館で開催
プロフィール
法隆寺/管長 古谷 正覚(ふるやしょうかく)師法隆寺第130世住職。
大阪府生まれ。
1957年に法隆寺で得度、1999年より執事長、2019年に管長代務者を経て、2020年現職に就任。
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